伊勢神宮の吉川竜実さんに学ぶ「神道」縄文意識覚醒アート―㉕甲州石班沢―(二)

「神道ことはじめ」コラム

「縄文意識」とは、己が生業なりわいに全力で勤しみ、無我や没自然の境地となって真の自己を解き放ち、あるがままの姿で自由に生き切っていく意識のこと。=0意識(私=0=∞)=ゼロ・ポイント・フィールド。ただしコトの成就や調和は神や仏、自然や宇宙に任せる。

吉川さん:当絵画を〝縄文意識覚醒アート〞として捉えた場合、そこには縄文意識(=ゼロポイント・フィールド)へと到達するための次の二つの重要なポイントが示唆されていることを読み取れるのではないかと思っています。

「笑い」が伴うこと
岡本太郎提唱の「対極=瞬間=爆発」思想には、「笑い」が伴うと考えられる。
それが縄文意識(=ゼロポイント・フィールド)に到るメソッドではないか。

呪術性の強い「モノクローム」であること
縄文意識(=ゼロポイント・フィールド)に到りやすい媒体として、極彩色のアートより有効的に働く。

まず①について当図の描写をみてみましょう。画面下段部では激流と川岸とがぶつかりあって水しぶきをあげる《第一の「対極=瞬間=爆発」》の様子が描かれています。中段部には、眼下に激流が渦巻く川岸の突端に一人佇み魚を捕獲しようとする漁師の場面《第二の「対極=瞬間=爆発」》と、緊迫する漁師に寄り添うようにして「微笑ましい」仕草の少年(↓「笑い」)が描き出されています。

出典:戸田吉彦氏著『北斎のデザイン』(翔泳社)

そしてその中・下段部で展開される激しいバトル(=漁労)をただ静かに見守るようにして、裏富士が屹立する《第三の「対極=瞬間=爆発」》の姿を見事に描写しているのです。

また、幾何学文様やフラクタル構造も見て取れます。漁師を三角形の頂点に、「少年と岩場で形成される左辺」と「漁師の手から打たれた投網で形成される右辺」で形作られる「山形の幾何学文様」は、上段の裏富士の稜線とフラクタルの関係です。

漁師が一心不乱に自然と対峙し生業の漁労に勤しむ「対極=瞬間=爆発」は、やがてクリスタルのような富士の存在(=透明なる混沌の象徴)へと溶け込み合一することができる。そのように読み取れるのではないでしょうか。それも漁師に寄り添う少年の存在が、「その合一には、〝笑い〞を伴うことが重要である」と示唆しているように思えてならないのです。

岡本太郎も「対極=瞬間=爆発」の際には「笑い」が最も大切であると常々確信していたようです。たとえば十字架にかけられたイエス・キリストの例をあげて共感しながら次のように述べたといいます。

昔、太平洋で海底火山が爆発して、明神礁みょうじんしょうという島が出来たことがある。一緒にそのニュース映画を見た。目もはるか大海原に、凄まじい噴煙があがり、火柱が立っている。孤独な、壮絶な光景だった。終ったとき、「あれはまさにオレだなあ」 見ると、彼の目がキラッと光って、濡れているように見えた。

暗い映画館の中で、スクリーンを見つめながら、自分自身、噴火している。誰も見るもののない爆発。孤独な、やむにやまれない、無償の爆発なのだ。存在の底の底から突き動かされて、噴出する炎。……彼の共感がぶるぶるっと伝わった。私は声が出なかった。
 
「キリストはいい奴だ」。そう言っていた。「共感するところがあるよ。だけどあいつの駄目なところは、十字架にかけられて、がっかりした悲しそうな顔をしている。あれが良くない。十字架の上で、槍で突き刺されて、血だらけになって、にっこり笑っていなきゃ。―岡本太郎は、にっこりしてるだろ」
そう。にっこりしていた。しとおした。 岡本太郎に乾杯したい。

(岡本敏子著『岡本太郎に乾杯』所収「岡本太郎の孤独」)
(波線は編集部による)

出典:「富嶽三十六景《甲州石班沢》」(メトロポリタン美術館蔵)

(次号に続く)
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吉川 よしかわ竜実たつみさんプロフィール
神宮参事・博士(文学)
皇學館大学大学院博士前期課程修了後、平成元(1989)年、伊勢神宮に奉職。
平成2(1990)年、即位礼および大嘗祭後の天皇(現上皇)陛下神宮御親謁の儀、平成5(1993)年第61回式年遷宮、平成25(2013)年第62回式年遷宮、平成31(2019)年、御退位につき天皇(現上皇)陛下神宮御親謁の儀、令和元(2019)年、即位礼及び大嘗祭後の天皇(今上)陛下神宮御親謁の儀に奉仕。平成11(1999)年第1回・平成28(2016)年第3回神宮大宮司学術奨励賞、平成29(2017)年、神道文化賞受賞。
通称“さくらばあちゃん”として活躍されていたが、現役神職として初めて実名で神道を書籍(『神道ことはじめ』)で伝える。

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