ちょっとした段差を飛び降りただけで骨折、転んだだけで骨にヒビが入る・・・
近年、昔ではあり得なかったような些細なことで骨折する子どもが増えているといいます。
子育て中のご家庭では、成長のために栄養面を考えた食生活をされたり、勉学や英才教育に力を入れていることも多いと思います。
では、からだを動かすこと、運動面の大切さはどのくらい意識されていますか?
そして、20~30歳になるまでのからだの使い方次第で、体にとって必要な骨の状態が決まってしまうことをご存知でしたか?
このことについて「今の子どもの生活は、将来の骨問題に大きな影響を及ぼす――」
そう警鐘を鳴らすのは、文部科学省の財団で10年間講師を務め、健康に関わる各界の裏側にも精通した健康アドバイザー・久保 克敬さん。
今回は久保さんが、オンライン講座『今を生き抜くためのトータル健康塾』で子育て世代の方々に向けて語られたお話をご紹介。
今の子どもの生活習慣がどれだけ骨の形成を妨げているのか、そして将来、骨折などで苦労しないために「今やっておかねばならないこと」は何なのかを、お伝えいたします。
久保克敬さん
(合同会社瑛光 特別顧問、日本気圧バルク工業株式会社 特別顧問)
2018年から一般社団法人静岡倶楽部にて、健康と教育を基本テーマとして、地球温暖化や社会情勢の変化などにおける課題に取り組む。
全国各地2000ヶ所以上で、健康をテーマとした講演会を開催。
大人になってからではもう遅い!?骨密度は一度決まると上げられない
ご高齢の方の不調として、骨粗しょう症が問題になっていることはご存知ですよね。
骨がもろくなって強度が低下し、ほんの少しの衝撃で骨折したりヒビが入ってしまう症状です。
でも実はこの問題は、大人になるまでに対処しなければならないことをご存知でしたか?
今の子ども、特に女の子は将来40代、50代、60代以降になると、骨粗しょう症になるケースが増えることが予測されています。
どうしてそうなってしまうのでしょうか。
そもそもどうして高齢になると骨がもろくなるのか。
皆さん、「骨密度」という言葉を聞いたことがあるかと思います。
骨密度というのは成長とともに徐々に高まり、20~30歳頃にピークに達します。このことをボーンピークというのですが、その後このボーンピークは40~50代まで維持され、年を重ねるとともに次第に減少していくと言われています。
そして女性の場合は、50歳くらいから急速に減り始めます。
その理由は「閉経」です。これはエストロゲンの分泌が関係していて、本来は骨を壊す細胞(破骨細胞)にブレーキをかけているものなのですが、閉経によってその分泌が減ってしまうんですね。
これはもう仕方のないことで、カルシウムをたくさん摂取したとしても止めることはできません。大人になってからいくらボーンピークを上げようとしても、一度決まった骨密度が上がることはないんです。
大切なのは「ボーンピークに達する20~30歳までに、この骨密度をしっかり上げておく」ということです。
なぜなら、「ボーンピークの山は人によって高さが違う」から。
この山を高くしておくことができれば、80歳、90歳、100歳と高齢になって骨密度が減ってしまっても、深刻な状態に陥らずにすみます。
将来の骨密度を決めるのは、成長期の過ごし方
ではどうやってボーンピークを高めておくのか?
実はカルシウムを摂ること以上に重要なことがあります。
それは「運動」です。
若いときに痩せている人は骨粗しょう症になりやすいと言いますが、それは成長期の体重や行動、労働によってボーンピークが決まるからです。
例えば体重40kgの人が重いものをほとんど持たない生活をしていれば、からだは40kgを支える骨しかつくりません。
ですがその人が日々20kgのものを担いでいたとしたら、60kgを支える骨が出来上がるんです。脳が自分にとってどれくらいの骨が必要かを判断しているんですね。
そして一度その骨が形成されると、からだは恒常性機能によってそれを維持し続けるわけです。
つまり、今の若い子が学校給食で牛乳を飲んでいても、骨が弱くなっていると言われている理由は、ダイエットをしたり、重いものを持つことや運動の機会が減り、筋力もついていないから。
家の中でゲームばかりしているのは筋肉の成長にも、骨の形成にも良くないことなんですね。
子育てをしている方にお伝えしたいのは「子どもに体重負荷をかける運動をやらせること」です。
なので、水泳のように重力があまりかからないスポーツよりも、バレーボールなどがおすすめです。ジャンプして着地するときに、自分の体重の3倍くらいの衝撃や負荷がかかるからです。
水泳も悪くはありませんが、それだけだと骨の形成においては不十分なので、ぜひ他の運動も取り入れてください。
また、子どもが飛び跳ねて遊ぶと大人は近所迷惑と言って止めさせることがありますが、骨のためには良いことなので、工夫が必要ですね。
このように、運動は筋肉を育てたりといろいろ意味がありますが、ボーンピークを高くする上でもとても大切なんです。
ちなみに大人になってからは「かかと落とし」をするといいと聞いたことがあるかもしれませんが、これは急速な骨密度の減少を緩やかにするための運動なので、意味はありますが、やはり一番良いのは、成長期に高い骨密度をつくっておくことです。
さらに女性の場合は妊娠や出産があるので、そのときにカルシウムの摂取が不足していると、第1子、第2子と出産ごとに骨密度が低下する場合もあります。
ボーンピークがもともと低い人が妊娠などで骨密度が減ってしまうと、生涯にわたって低骨量の状態が続くことにもなりかねません。
大人になってから対処するのはなく、成長期に運動や生活習慣によって骨密度が決まるということを踏まえ、お子さんの一生の問題として、ぜひボーンピークを高める子育てをしていただきたいと思います。
▼毎月オンラインZoomにて開催!
今さら聞けない健康の基礎知識や効果的な病気の予防法、食品や医療業界の実態まで、目からウロコな情報が得られるトータル健康塾。軽快でわかりやすい健康アドバイザー・久保 克敬さんのお話は、毎回大人気!
子育てにも役立つ情報です。ぜひご参加くださいませ。