「満月のLetter vol.7」〜新CDができるまで〜岡野弘幹さんの収録現場を取材してきました!(第2回)

サウンドアーティスト岡野弘幹さんの世界

令和4年6月13日
奈良県吉野郡にある「大峯本宮 天河大辨財天社てんかわだいべんざいてんしゃ(以降、天河神社)」で、岡野弘幹さんによる新しいCDのための「音霊の収録」が行われました。

聖地で行う神さまへの奉納演奏がCDに収められるという、非常に貴重な収録現場。

前回の記事「満月のLetter vol.6」では、そのリハーサルの様子などをお届けいたしました。

今回は、「神さまへの報告祭」と「本番の収録」の様子をレポートいたしますので、ぜひ最後までお読みください。

天河の神さまへの報告祭

18時を過ぎた、ともしごろ
天河神社の拝殿で報告祭が始まりました。

報告祭とは、人生の節目に行う諸祭の一つです。神さまに御神饌ごしんせんを捧げることで喜んでいただき、祝詞を奏上することでそのご神徳をいただいて、安寧と発展、繁栄を祈るものといわれています。

この日は、岡野さんが聖地の響きを多くの方にお届けしていくという決意を、神さまにご報告申し上げるため、昇段参拝しょうでんさんぱいが行われました(昇殿参拝は神さまのより近くでお参りできる参拝のこと)。

岡野さんとパートナーの純子さん、技術スタッフの方々、そして私たち取材班の計8名が拝殿の前に並び、祭祀の始まりを告げる太鼓が打ち鳴らされると、宮司さまが神さまへご挨拶をされます。

そのお言葉の一部、覚えている範囲でお伝えしたいと思います。

令和四年の水無月の十あまり三日
明日には満月を迎える宵の今日の夕日の木立
この度、尊きおおがみさまのご支援のまにまに
かねてよりこの天河の地において
音霊の想いをおさめたいという熱き想いを持ってきた
音楽家、岡野弘幹さんをはじめとして
この度の聖地巡礼第一弾として
天河のこの潤しき作品を遍くあまね世へと
販売の御業をお伝えいただくトータルヘルスデザインの皆さまに御参詣を賜り
今宵、御神さまの御前にこの音楽の収録をお納めいただきますことを誠に心より感謝いたします。

ご挨拶が終わり、祝詞の奏上が始まります。

柔らかな夜の静けさの中、一字一句、力強くも流麗な宮司さまの言霊が響き渡ります。

祝詞奏上の中で岡野さんが名前を読み上げられると、御神前に向い玉串たまぐし拝礼をされます。
※玉串…榊・樫・杉などの木の枝に、紙垂しで木綿ゆうを麻で結んで下げたもので、参拝者や神職が神前に捧げます。

神前で深くお辞儀をされる白装束の岡野さんの姿が、

御神殿の周りで夜風に揺れる木々と重なり、美しい絵画のような情景となっていました。

そうして参詣者が順に玉串礼拝をさせていただき、報告祭が無事、終わりました。

聖地で響く音が空間を飛び交う

さていよいよ、岡野さんの演奏が始まります。
演奏の舞台は、流造ながれづくりの本殿の正面に位置する、美しい朱色の布の敷かれた神楽殿かぐらでん

天川の自然に包まれた、境内の特別な場所で演奏された音がそのまま収録されます。

美しい朱色の神楽殿。
演奏に使われるネイティブアメリカン・フルートの数々
さまざまな楽器があります。一番左にあるのは「五十鈴いすず」と呼ばれる天河神社に古来伝わる独自の神宝です。
岡野さんのはからいで舞台に上げてもらい撮影する取材班とセッティングに興味津々のスタッフ西原
岡野さんがスタンバイされると、辺りは静まり返りました。

カメラや音響の機材の最終チェックが終わると、その場にいた全員が音を立てないように、固唾を呑んで岡野さんを見守っていました。

ひととき静寂に包まれたかと思うと、

四方拝の高音が静寂を破り、天に昇っていくように、音が意志を持っているかのように拝殿を駆け抜けました。

途端、その合図を待っていたかのように蛙が一斉に鳴き出しました。

そして一曲目が演奏されると、その場にいた全員の意識はすべて岡野さんに注がれました。

次々に生まれてくる音は、自由自在に空間を駆け巡るように響き渡り、

またたくまに空間は優しく満たされると、空気が変わったような気さえしました。

まるで、音に乗って神さまや祖霊が空間を旋回しているようでした。

柔らかなエネルギーを擁する天河神社という聖地で、岡野さんの音は、伸びやかに、どこまでも遠く、どこまでも高く、何百年先までも飛び続けていくようでした。

永遠に継がれていく生きとし生けるものの安寧を願う祈りのように。

取材を終えて

今回の収録に参加させていただいた取材班3名は岡野さんの生演奏をこれまでたくさん聴かせていただいていましたが、聖地の波動に共鳴しているかのような岡野さんの音に、それぞれ特別に感じる想いがありましたので、掲載させていただきます。

【取材班・スタッフ西原】
岡野さんは場、空間、環境をも楽器にしているように感じています。環境と一緒に奏でているというか、物語りが産みだされるイメージなんです。毎回どの場所で演奏されても場を楽器のように扱う技術が素晴らしく、聞き手をあざやかにその世界へいざなってくれるのです。収録の様子を一部伺わせてもらいましたが、今回は天河神社という場と共に音を紡いだ岡野さんの物語を聞けるのを今から楽しみにしています。

【取材班・スタッフT】
CDやコンサートホールで岡野さんが奏でられる音に触れると、いつも心地よく、静寂が訪れます。初めて聞いた瞬間から、その澄んだ音に魅了され続けています。
けれど、聖地で聴いた岡野さんの音は、その“生命(イノチ)”の躍動度合いがまるで違いました。音がイキイキと動き回っているように感じました。空間全体へと広がっていき、天にも高く昇っていき、音自体が、軽やかにあっちこっちへ移動していたんです。
私はいつも以上に、頭ではなく、カラダ全体で聴いていました。優しい音に包まれ、心身が深いリラックス状態へと導かれていきました。

【取材班・スタッフK】
天河神社の神域の中で、岡野さんの音の響きと一緒に、包み込んでくれるような温かいエネルギーを感じました。ふと、「ああ、神さまご先祖さまはやっぱりいらっしゃるのだな…」と思うと、涙が出ました。

次回は、この収録で生まれた「聖地巡礼」シリーズの詳細についてお届けさせていただきます。ぜひ楽しみにお待ちください。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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