伊勢神宮の吉川竜実さんに学ぶ「神道」縄文意識覚醒アート―⑫神奈川沖浪裏―(五)

「神道ことはじめ」コラム

「縄文意識」とは、己が生業なりわいに全力で勤しみ、無我や没自然の境地となって真の自己を解き放ち、あるがままの姿で自由に生き切っていく意識のこと。=0意識(私=0=∞)=ゼロ・ポイント・フィールド。

吉川さん:透明なる混沌から優れた「芸術」作品が現出されると共に、「呪術」も発生するという岡本太郎の考えは左のようなものです。

それが現象的に表出される場合、なんらかの意味で限定される。造形的表現なら、形・色・線によって明確化されるのだが、私はその表出のしかたに二つのモメントがあると思う。一つは表現以前の世界と直接的な場合。

芸術家は己れのうちにある透明な混沌こんとんを、その感動のまま、最も自然に、直接的に表現する。それにはまず、本能主義的な直接行動がある。自動描法的な技術や、アクション・ペインティング、タッシスムなど。

また自然主義者が風景だとか花という具体的なものをとおしてそれを感じとり、定着する場合もある。いずれにしてもなんらかの形で混沌をうつしとり、表出するのだ。

このいわば見えない、聞こえない世界を、表現し、実体としてうち出し、充実させようという努力は、近代芸術の意識の中に極めて強烈であって、その根底をつらぬいている。そしてその表出されたもの(芸術作品)に主体的価値をおく。

一方、そのようにいわば単純な、直接的な関係なしに形態がうち出されるモメントがある。それは精神共同体内の秩序、約束であって、それ自体としては無言である。が、一つの媒体として、具体的にコントンを啓示けいじする。これはすでに芸術の領域をこえた、呪術の世界といっていい。

( 略 )

このように、考えてみれば単なる約束であるにすぎないものが、現実的にわれわれの精神生活を根底からゆすぶり動かすのだ。その感動は巧緻こうちな芸術表現よりも強烈に生活的であり得る。

約束ごとなら、知らなければそれで済むはずだ。しかしたとえよそごとであっても、何かしら迫ってくるものがあるのはなぜだろう

未開社会の奇怪な呪物、装飾、モニュメント、また未知の信仰と儀軌、表象など。そこにはなんらかの気配で、人間的、共通の感動がひそんでいるに違いない。約束ごとではなく、精神の凝集がある。それが普遍的な呪力をおびるのだ。
秘密荘厳「神秘日本」(岡本太郎の宇宙4『日本の最深部へ』より)


以上のことより、岡本太郎が光琳の『燕子花図屏風』と『紅白梅流水図屏風』から「ただ何かに撃たれている」と感じたものの正体とは「透明なる混沌」のことであり、それが発する凄まじいエネルギーに接したからではなかったか! と推察しています。

ちなみに岡本太郎が提唱した「透明なる混沌」については、神道でも理想の境地・空間として「混沌の始め」とか「清浄」とか呼ばれて大切にされてきています。

神人むにんは混沌の始めを守る。(『宝基本記』より)

一心不乱を以て清浄となす、或いは生を超へ死を出づるを以て清浄となす
(『
類聚神祇本源るいじゅうじんぎほんげん』「神道玄義篇」より)


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今月の北斎 「神奈川沖浪裏」(富嶽三十六景)

「対極」となるマイナス面に己れ自身の全身全霊を以て徹底的に賭けることで、
「瞬間」的に「爆発」を生み出し、「宇宙=無=絶対」との合一を果たす。この
境地や空間を、太郎は「透明なる混沌」としています。

吉川 よしかわ竜実たつみさんプロフィール
皇學館大学大学院博士前期課程修了後、平成元(1989)年、伊勢神宮に奉職。
2016年G7伊勢サミットにおいて各国首相の伊勢神宮内宮の御垣内特別参拝を誘導。通称“さくらばあちゃん”として活躍されていたが、現役神職として初めて実名で神道を書籍(『神道ことはじめ』)で伝える。

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