伊勢神宮の吉川竜実さんに学ぶ「神道」縄文意識覚醒アート―⑰凱風快晴―(一)

「神道ことはじめ」コラム

「縄文意識」とは、己が生業なりわいに全力で勤しみ、無我や没自然の境地となって真の自己を解き放ち、あるがままの姿で自由に生き切っていく意識のこと。=0意識(私=0=∞)=ゼロ・ポイント・フィールド。

吉川さん:『富嶽三十六景』の三役の一つで通称「赤富士」とも呼ばれる『凱風快晴がいふうかいせい』の「凱風」とは、気持ち良く清々しい初夏に吹く「母の深い愛情をたとえた南風」のことをいいます。

この絵からは画題にも示されているように、温和で優雅な女性的な印象を持つのではないでしょうか。誰もが一見して躍動的で荒々しい男性的なイメージを有する『神奈川沖波裏』とは対照的です。

この穏やかな印象は、なだらかく伸びやかに描かれた富士の稜線から来ています。絵画全体の半分を富士の雄姿に当て、鑑賞する者に決して窮屈なイメージを抱かせないように大胆に画面右側に落としています。

画面全体の背景には白い鱗雲うろこぐもがたなびく青く晴れ渡った空が描かれ、「平行三ツ割の法」を用いて画面上部に雪渓せっけいの残る山頂を、同中部には赤く染まった中腹を、同下部には深い緑が群生する樹海を美しく描き分けています。

余計なものは一切排除して青空と霊峰・富士のみを捉えてシンプルに描き出し、主張の強い色同士を組み合わせることによって描写対象に「明瞭性の原理」が働くという「コントラスト配色」と「トリコロール配色」と呼ばれる手法を駆使して霊峰が明瞭にして色鮮やかに現出されているのはまるで「美人画」を眺めているようです。

■「平行三ツ割の法」で凱風快晴を解く
出典:戸田吉彦『北斎のデザイン』(翔泳社)より

ちなみに『凱風快晴』のコントラスト配色は、明度差の近い富士中腹の「赤」と裾野に広がる樹海の「緑」とが近接するさかいをぼかし技術でもって赤と緑とを和らげることによって、強い鮮やかさが品よくまとめられているところに窺われます。

またトリコロール配色は、画面上中部の赤富士の「赤」と背景の青空の「青」という色鮮やかな二色に、空にたなびく鱗雲と高嶺に残る雪の「白」というセパレーションカラーが添えられることによって色調効果を発揮し、青空の白い雲と山頂の白い残雪とが赤富士を美しくも大いに引き立てているところに見られます。

ところで『富嶽三十六景』に先立つ1812年に刊行した絵手本『略画早指南りゃくがはやおしえ』の中で北斎は、万物の基本をなすのは丸と角であるのでコンパスと定規で作図の原理を教える、と自ら述べています。従って『富嶽三十六景』の製作には既に多くの先学たちが指摘している通り、幾何学的な要素が数多く取り入れられていることは明白といえるでしょう。

『凱風快晴』が「平行三ツ割の法」を用いて描かれているのに対して、『神奈川沖浪裏』の構造には、ミロのビーナスやレオナルド・ダ・ヴィンチのモナリザなど、人間にとって構図が最も美しく安定していると感じる長方形の縦横比(=縦1に対して横1・618の比率)を有する「黄金矩形おうごんくけい」や、黄金矩形にあるすべての正方形の内部に四分円を描くことで生まれる「黄金螺旋おうごんらせん(渦巻状の螺旋)」の近似という数理的な観念が深く結びついています。

それを明らかにされたのが、加藤千佳女史・大田昇一両氏による「北斎『神奈川沖浪裏』の構図についての一考察」です。

出典:「富嶽三十六景《神奈川沖浪裏》」ともに公益財団法人
東京富士美術館収蔵

https://www.fujibi.or.jp/our-collection/profile-of-works.html?work_id=362

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吉川 よしかわ竜実たつみさんプロフィール
神宮参事・博士(文学)
皇學館大学大学院博士前期課程修了後、平成元(1989)年、伊勢神宮に奉職。
平成2(1990)年、即位礼および大嘗祭後の天皇(現上皇)陛下神宮御親謁の儀、平成5(1993)年第61回式年遷宮、平成25(2013)年第62回式年遷宮、平成31(2019)年、御退位につき天皇(現上皇)陛下神宮御親謁の儀、令和元(2019)年、即位礼及び大嘗祭後の天皇(今上)陛下神宮御親謁の儀に奉仕。平成11(1999)年第1回・平成28(2016)年第3回神宮大宮司学術奨励賞、平成29(2017)年、神道文化賞受賞。
通称“さくらばあちゃん”として活躍されていたが、現役神職として初めて実名で神道を書籍(『神道ことはじめ』)で伝える。

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